その日は朝だけ雨が降っていて。

いつもは校庭で行われている全校集会が、体育館で行われていた。




君のココロ 君のイロ





「…以上 校長のご挨拶でした。
 では次に…。」


「あれ、今日は注意事項とかで終わりじゃないんだね〜シバくん。」

こくり。

1−Aの列では(身長差は気にしない)兎丸と司馬が小さく話していた。
早く終わって、隣のクラスの列…1−Bの猿野天国のところに行きたい、と思っていたのだが。

どうやらこの日は、少し違っていたようだ。


「本日は臨時の表彰式を行います。
 先日の全国学生美術コンクールにて、本校の生徒が大賞を受賞しました。」

司会の教頭の言葉に、流石に生徒達はざわめいた。
一般の生徒にとってはなじみのない美術コンクールでも、全国で大賞に選ばれたというのは、「すごい」ことだ。

「へえ〜〜!すごいねえ、シバくん。
 ウチの美術部にそんなすごい人いたんだ〜〜。」
こくん。

兎丸の言葉に司馬は先ほどよりしっかり頷く。

どんな人だろう、と二人は…そして他の全生徒達は、前に注目した。


「では、受賞を行います。
 

 1年B組、猿野天国くん。」


「はい。」


呼ばれたのは、非常に聞きなれた名前。




「え…?」


「えぇえええええ???!!!」



それは本人を知っている人には誰でも驚く名前だった。



######


「Hey猿野!おまえ、すげーじゃねえか!」
「まさか君に絵の才能があるとはね…驚いたよ。受賞おめでとう。」
「ねえねえ!賞とった絵ってどんなの?!」


その日の放課後、野球部ではほぼ全員が天国を囲んでいた。
いつも明るく、騒がしく、絵を描くような繊細さ(偏見ではあるが)など
微塵も感じられないようなイメージの天国が、どのような絵を描いたのか。

だが、天国は受賞に関してはどこか淡白に受け答えていた。
全国コンクールで大賞をとったというのならいつもの天国なら大声で言いふらしていてもおかしくはないのに。

野球部の多くはそう思っていた。


「ああ、ありがとうございます。
 絵なら、そこに写真があるけど…。」

先ほど教師から渡されたらしい、コンクールの冊子が天国の鞄の上に乗っていた。

「絵はしばらく色んなとこで展示するんだと。
 …ま、恥ずかしいだけだけどな…。」

天国は少し苦笑した。
恥ずかしい、というが嬉しい恥ずかしさ…というわけではなさそうだ。
どこか…何かを見られたくない…そんな恥ずかしさのような…。


「…これは…。」

「すごい…のだ…。」

「綺麗っす…こんな綺麗な青、初めて見たっすよ…。」

冊子の写真を見て、次々と漏れ出す感嘆の声。


それは幻想のような風景だった。
深い森、澄みきった水をたたえる泉と…そこにだけ映る空。


「…すッげーな…。」

「…………。」

「素晴らしい…ですね、絵に疎い私も引き込まれてしまいそうです…。」

「猿野、こんな才能があったとね…。」



「才能なんて、そんなごーせいなもんでもないっすよ。」
天国はもういいだろ、といったしぐさで冊子をとりあげた。


「があっ。」

「おい、もう少しくらい…。」


「ダメっすよ。」

そう切って、天国は冊子を鞄につめこんだ。


残念そうな面々の中で、一人兎丸は先ほどの天国の絵を思い浮かべていた。


深い森の中でただ空を映し出す泉。
どこかにありそうで、どこにもなさそうな美しい色。
そして誰も存在しない風景。


兎丸は、あの絵を見たとき思った。

「さびしい」と。



 #########



「兄ちゃんさ…。」

「ん?なんだよ?」

柔軟体操の時間。
今日は一人休んでいたため、兎丸は運良く天国と組んで柔軟をはじめていた。

その時、思っていたことを聞いた。


「あの絵、どうして誰も居なかったの?」

「……別に、なんとなく、かな。
 風景描くときに…あんま人って描きたくない…っていうかな。」


「見つけられない場所を描きたかったの?」



その言葉に、天国は一瞬動きを止めた。


「…そうかもな。」


オンナは秘密の多い生き物なのよD などとごまかしたが。


兎丸は気づいていた。



「…いーこと思いついた。」



「何だよ?」



「兄ちゃんにはまだ内緒。」



「はあ?何だよ、それ。」


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「センパイ。前から思ってたんですけど、なんでこの部室、こんな綺麗な絵があるんすか?」


「ああ、それ。確か10年くらい前の野球部の先輩が描いた絵だって話だけど…。」

「野球部の?ってか、これプロの絵かと思った…。」

「いや、当時は1年だったらしいけど。コンクールの大賞とったんだと。」

「マジっすか?うっわー、けどマジ綺麗な絵ですよね〜。」

「だよな〜、和むっていう感じ。」

「ですよね、泉に移る空と太陽がすごく綺麗で…あれ?こんなとこにサインが…
 二人ぶん?なんで?」

「あとから誰かが描き加えたんだそうだ。
 それ、太陽な。」

「へえ…えーっと、名前は…。」


Amakuni  &Pino




                                        END


非常に説明の少ない文章ですみませんでした!
単純な内容なので必要はないとは思いますが…。
ちょっと闇猿であんまりハン猿&メガネ猿じゃなくて…まあ言うなれば芸術猿でしょうか…。
あと完璧に兎丸×猿野ですね。
やっぱり絵画っていったらピノくんかなあと…。
それと ホントは泉の奥の方にサインを「kijimura」と置いちゃったりしようかと思いましたが…ちょっと救いを。

結城りあ様、非常に遅くなり、なおかつこんなんでまことに申し訳ありませんでした…。
素敵リクエスト本当にありがとうございました!!



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